添乗員インタビュー:ダブルワークで50代から添乗員に。安心できる旅のお手伝いができることが、何より嬉しい!

添乗員に仕事の実態を語ってもらうインタビュ―特集。

今回は、50代になって、かつ本業を続けながらのダブルワークで、添乗の世界に飛び込んだ橋本洋子さん。そんな行動派の橋本さんですが、旅行業へと突き動かしたものは何だったのか?添乗員になったきっかけやお仕事の魅力についてお聞きしました。

旅行が好き!その思いで会社員と添乗員のダブルワークに

ー添乗員になったきっかけを教えていただけますか

橋本洋子さん(以下、橋本さん):もともとずっと会社員をして、その頃から海外旅行が大好きでした。ただ、自分でお金を払って行くのは、どうしても限りがありますよね。「お仕事で海外に行けたらなんていいのだろう!」と思ったのがきっかけで、添乗という仕事に興味を持ちました

そこで添乗員になるための講習を受けて資格を取って、はじめは会社員とダブルワークで、土日だけ国内添乗をしていました。海外希望ではあったのですが、当時は、国内添乗を何回、もしくは数年やらなければ海外添乗員向けの講習を受けられない、といった決まりがあったので、国内から始めていました。

ーダブルワークでされていたんですか?! それは大変ですね。

橋本さん:そうなんです。実は50代から始めたので、最初のうちは体力的に結構大変でした。会社員と言っても時短勤務ではあったのですが、週5日働いて、土日のどちらかを国内。しばらくそんな生活を続けていて、その後、海外添乗にも行くようになりました。

ただ、ツアーや打ち合わせには有休を使ってスケジュール調整していたので、3ヶ月に1回くらいしか行けないような状況ではありましたね。

その後、本格的に海外添乗をやっていこうと、会社を退職して添乗員1本に移行しました。

お客様との触れ合い、関係作りが魅力の仕事

ーーかなり大変だったかと思いますが、それでも添乗のお仕事を続けていた魅力はどんなところだったのでしょうか?

橋本さん:国内よりも海外のほうが日数が長い分、お客様と一緒にいる時間が長いので親しくなったり、いろいろな出逢いがあったりするんです。そうしてお客様と触れ合ったり、深い関係ができるというのが、楽しみであり魅力でしたね。

新婚の方がいると、ツアーのみなさんで祝福ムードになったり、仲良く和気あいあいとゲームをしたり。また、学生さんが多いと年代的にもみなさん私をお母さんのように慕ってくれるので、それも嬉しかったです。

ーー逆に、つらかったことはありますか?

橋本さん:ツアーでは、参加いただいたお客様全員にアンケートをお願いしています。食事などの項目以外に、添乗員の項目もあるのですが、そこで添乗員への低評価を目にしたときはつらいですね。自分としては一生懸命にやったつもりだったけれど、それがお客様には伝わらなかったのだなと感じました。添乗員の仕事ぶりはこのアンケートで評価されてしまうので、落ち込むこともあります。

オススメは地中海の国々、そしておいしい料理

ーー添乗で行って良かった国を教えてください。

橋本さん:特にイタリア、スペイン、マルタ、ギリシャなどの地中海近郊の国々はおすすめです。タコやピスタチオなど、おいしいものが多いんです。

フランス、イタリア、マルタなどは、現地の食事はもちろん、めずらしいモロッコ料理など、現地の料理以外もおいしかったですね。日本食が恋しくなって行ったジェノバで食べたお寿司も美味しかったです(笑)。何回も同じ地域を回っていると、行きつけのお店も出来てくるので、「次は、あのレストランに行こう」と、添乗員のチームで行くこともありましたね。

ーー大変だなと感じるような国はありましたか?

橋本さん:どの国も素晴らしくて良かったのですが、添乗でちょっと大変だったのは中国。シルクロードのツアーで行ったのですが、電車の乗り継ぎ時間が驚くほど短いのに、飛行機レベルの荷物チェック=検閲があるんです。本当に焦りましたね。

また、エジプトはホテルに問題があって、対応にかなり追われたことがありました。ただ、それをカバーしてくれるほど、現地のガイドさんがとてもいい方だったんです。そんな風に、何かマイナス点があっても、他の面がいいと感想も変わるものですね。

ーーこれまでに経験した印象的な出来事やトラブルなどあれば、聞かせてください。

橋本さん:印象に残った出来事といえば、パスポートをなくしたお客様がいた時でした。

そのときのツアー行程が、イタリアから船でクロアチアに行って、またイタリアに戻ってくるというルートでした。もちろん、船であっても別の国に行くので、パスポートがないと出国できません。

そんな状況であるご夫婦で参加の旦那さまのほうが、パスポートを無くしてしまったんです。パスポートの再発行には時間がかかるので出国できないことに。私は他のお客様と、船で他の国を回って、もう一度イタリアに戻ってきました。

その間、ご夫婦は2人でイタリアで待機されていて、私たちがイタリアに戻って再会したときは何だか感動しましたね。港のところにお二人がいて手を振ってくれていました。合流したときは喜んでいただけて、私もとても嬉しかったです。

▶マルタ島の景色

体調を整えるのも仕事、万全の対策をして自己管理

ーー添乗員さんはとてもタフなお仕事だと思いますが、体調管理の秘訣を教えてください。

橋本さん:旅行中、添乗員が体調を崩すわけにはいかないので、とにかく万全の対策をとっています。特に、冬はインフルエンザが怖いので、予防としてビタミン剤を毎食毎にガバガバ飲んでいました。とにかく予防に徹するために、予防の一環として薬も飲んでいました。

特に、クルーズツアーなどだと、添乗員は窓もない部屋で、しかも相部屋です。2段ベッドの小さな1部屋を4人で使ったこともありました。まるで蟹工船のような世界です。

もし同じ部屋の同僚がインフルエンザになってしまったらと思うと恐ろしいのですが、自分としてはうつらないようにできるだけの対策をするしかないのですよね。

また、お客さまがもしインフルエンザにかかってしまっても、私がお手伝いしないわけにはいきません。いかに他のお客さまにうつらないようにするか、そして自分もうつらないようにするかとても気をつかいます。

実際に、ツアー中にかかってしまった方がいらしたときは、そのお客様は添乗員のすぐ近くの前方席に座っていただき、他の方はすべて後方に。最後の移動でしたが、本当に冷や冷やしたものです。そのようなときも、ビタミン剤や予防になりそうな薬を服用して、なんとか乗り切りましたね。

ーー時差ボケ対策などはありますか?

橋本さん:実は時差ボケというのはあまりなかったんですよね。おそらく仕事ということで緊張感があって、気が張っているからかもしれません。

お客様が安心して旅するお手伝いができるのが何より

ーー最後に、「添乗員」という仕事のやりがいを教えてください。

橋本さんお客様が旅行中、喜んで楽しく過ごしてくださっている様子を見るととても嬉しい気持ちになりますし、添乗員で良かったなと感じます

海外旅行は、危険と隣り合わせです。
バルセロナのサグラダファミリアなどは、とても有名な観光地なだけにスリがとても多いんです。実際、ツアーの団体の行列に変な人が入りこんできて、参加者の女性のリュックから財布を抜き取ろうとする瞬間を目の当たりにしました。即座に大きな声を出して、未遂で終わらせることができたときはホッとしましたね。

お客様だけでなく、添乗員本人も海外ではいろいろと危険な目にあっています。
ですから、事件や事故に巻き込まれることなく、ツアー参加者全員で無事に帰ってくることができたときは、やりがいを感じます。安心して旅行をするお手伝いができた、それがやはり一番ですね。

※添乗員のプライバシー保護のため、お名前は仮名としております。

(インタビュー・文/新地ゆきこ)

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